家相について

施主との打合せの時に、必ず聞くことがある。「家相」を気にしますか?という質問だ。時には施主の方から、家相を気にするのですが設計をお願いできますか、と先に言われることもある。

家相というのは、人相、手相と同じく、客観的に表現できない何かがあって、鬼門(東北)の方位から十度外れているから小吉、二十度外れていれば大吉というものでもないし、巽(東南)に玄関、乾(西北)に蔵を建てれば金が貯まるというものでもない。
昔の農家などは、確かに玄関は東南にあることが多く、蔵やお稲荷様は西北にあった記憶がある。敷地が広ければできることもあるが、今の時代は、敷地の制約などでこれがなかなか難しいのである。要は日当たりと風通しがよく、衛生上利にかなっていれば、よい家相ということだ。人の忌み嫌うところにワザワザ建てることもないが、不便を忍んでまで玄関やトイレの位置を「家相」に従順にすることもない。

だからといって、家相を無視して設計を進めていくかというと、そうはいかないのである。
気になるところを1~2箇所、家相がよくなるように設計することは、それほど難しいことではない。ようするに、「験担ぎ」だと思えばよいのである。施主にとって家づくりは多くの人が一生に一度のことであり、資金面も含め何かと不安を感じているのである。
家相を守るということは、家を建てても心配ないよ、大丈夫だから頑張りな、と信頼している人に背中を押してもらうのと同じなのである。そう考えれば、設計者としても家相を守ることに一定の協力は不可欠である。

ところが、ここで一つだけお願いをすることがある。家相を本で勉強する人もいるが、大抵の人は占い師のところに足を運び、助言をいただくことになるのだが、中には一人では不安だから何箇所にもいく人がいる。結果として、それぞれのアドバイスを聞いたら、トイレの行き場がなくなった、ということがある。そうなると、設計者としてはお手上げだ。
又、年回りを気にして家族全員の年回りをみてもらったら、数年先まで家が建てられなくなった、という話も聞く。家相や年回りを気にする人はくれぐれも、早めにみてもらうことをお勧めする。建てる時期も間取りの検討も、早いうちは軌道修正もできるし、時間をかけて知恵を出し合えば、解決策はあるのである。建ててから後悔しないようにしたい。
なぜなら、何かあった時に、家を建てたのが悪かった、、、となりたくはないのである。